COLUMNコラム
- 2024.03.08
- 税金
中古住宅の住宅ローン控除の適用条件を解説!受けられない場合も紹介
「中古住宅購入後、住宅ローン控除は利用できる?」
「中古住宅の住宅ローン控除の限度はいくらだろう。」
そんな疑問をお持ちではありませんか?
住宅ローン控除の税制改正により、中古住宅では新耐震基準適合住宅なら利用ができるようになりました。
新たに住宅ローン控除の対象となる中古住宅も増えたため、これからローンを利用する人はこの機会に制度を確認しておきましょう。
本記事では、中古住宅の住宅ローン控除事情から適用の条件、流れなどを解説します。
目次
1.住宅ローン控除とは
国土交通省によると、『住宅ローン控除とは年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度』としています。
そのため、住宅購入時に住宅ローンを利用する人は、控除を申請することによって所得税・住民税を節税できるメリットがあります。
例として、中古住宅購入時の住宅ローン控除額を計算してみると、長期優良住宅で3,000万円のローン残高があるケースでは、受けられる控除額は年間21万円、10年間では210万円になります。
以下では中古住宅での住宅ローン控除の仕組みを詳しく説明していますので、控除を受ける際の参考にしてみてください。
2.中古住宅の住宅ローン控除の条件
中古住宅購入後の住宅ローン控除を適用されるための条件を解説します。
耐震基準や物件価格などによって控除が利用できないケースもあるため、全ての中古住宅に住宅ローン控除が利用できるわけではありません。
中古住宅で住宅ローン控除を適用する条件は、以下の通りです。
・新耐震基準に適合している住宅であること ・自らが居住するための住宅である ・床面積50㎡以上 ・住宅ローンの借入期間が10年以上 ・合計所得金額が2000万円以下 ・引渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に入居している ・併用不可の特例を受けていない |
ただし、旧耐震基準の中古住宅でも、耐震基準適合証明書などで耐震性を証明できれば住宅ローン控除の対象となる場合があります。
旧耐震基準と新耐震基準の違いは、以下の通りです。
旧耐震基準 | ・1981年5月31日までに建築確認を行なった建物に適用された基準。 ・震度5強程度の揺れでも建物が崩壊しない構造基準 |
新耐震基準 | ・1981年6月以降に建築確認を行なった建物に適用された基準 ・震度6強~7に達する程度の大規模地震動にも耐えられるような基準 |
中古住宅では築年数・建築確認時期によって耐震基準が違う場合がありますので、住宅購入時には住宅ローン控除の対象となる物件なのかを確認するようにしましょう。
後から申請できずに後悔することがないよう、購入前にはその物件が条件に当てはまっているのかを確認しておくのがポイントです。
3.中古住宅の住宅ローン控除の限度額と控除期間
中古住宅の住宅ローン控除の限度額と控除期間は以下のようになっています。
(1)中古住宅の住宅ローン控除の限度額
原則、中古住宅で住宅ローン控除を利用する際の限度額は以下のようになっています。
住宅の環境性能 | 借入限度額 |
---|---|
長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 |
上記で紹介した条件に当てはまっている中古住宅であれば、最大3,000万円の0.7%、年間21万まで控除を受けることが可能です。
仮に借入総額が5,000万でも、住宅性能によって最大3,000万円・2,000万円の限度額で控除を受けることになります。
ちなみに、新築住宅の住宅ローン控除では、控除限度額は5000万円の0.7%で35万円、最大13年間控除が受けられるため、最大控除額は455万円です。
中古住宅購入時に住宅ローンをお考えの人は、年間いくら控除されるのかなどを事前に確認しておくようにしましょう。
(2)中古住宅と買取再販住宅の控除期間
一般的な中古住宅と買取再販住宅の、住宅ローン控除の期間はこちら。
一般中古住宅:売主は個人、売却を不動産会社に依頼して買い手を探している住宅のこと | ・原則10年間の住宅ローン控除を受けられる |
買取再販住宅:不動産会社が中古住宅を買い取り、手を加えて(リフォームなど)再度販売している住宅のこと | ・令和4年または令和5年に居住を開始した場合のみ、13年間の住宅ローン控除を受けられる ・令和6年または令和7年に居住を開始した場合は最大10年間の住宅ローン控除を受けられる |
中古住宅購入時には、居住を開始する時期や、その物件の持ち主が個人なのか不動産会社なのかにも注目しておくようにしましょう。
不動産会社が再販している買取再販中古住宅では、令和4年と5年の期間限定で住宅ローン控除の期間が13年に延長されています。
その他の物件は、最大10年間の住宅ローン控除となる点に、注意しておきましょう。
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4.中古住宅で住宅ローン控除が利用できないケースとは
中古住宅で住宅ローン控除が利用できないケースには、以下のものがあります。
・特例の適用を受けている場合 (居住用財産の譲渡所得の特別控除や居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などを受けている場合) ・投資用の住宅の場合 ・住宅の引き渡しから6カ月以内に入居しなかった場合 ・合計所得金額が2,000万円を超えている人 ・住宅の登記簿面積が50平米未満の場合 ・住宅の1/2以上を事業に利用している場合 ・住宅ローンの返済期間が10年未満のケースなど |
自宅の半分以上を事業に利用する人や、投資用で中古住宅を購入する人、合計所得金額が2,000万円を超えている人などは住宅ローン控除が利用できません。
また、住宅ローンの期間は10年以上であることが条件なため、返済期間にも注意が必要です。
5.住宅ローン控除を受ける流れ
住宅ローン控除を受ける流れは、以下の通りです。
①中古住宅に入居 ②確定申告で申請 ③還付金または減額された分の納税通知書を受け取る ④2年目からは年末調整で住宅ローン控除が可能 |
これから住宅ローン控除を利用する人は、初年度は確定申告を行う点を注意しておきましょう。
(1)中古住宅に入居
中古住宅購入後、住宅ローン控除を利用する際は住宅の引き渡し、または工事完了から6ヶ月以内に入居しなければ対象になりません。
そのため、住宅ローン控除を受ける際には入居時期をよく確認しておくのがおすすめです。
住宅ローン控除を受けるためには、最初のステップとしてその住宅に入居しておくのが一般的な流れです。
(2)確定申告で申請
住宅ローン控除を申請する際、初年度は確定申告を行う必要があります。
会社員の方は入居した翌年の1月1日〜3月15日、自営業の場合は2月16日〜3月15日までに申請が必要となります。
住宅ローン控除申請のための、確定申告時に必要となる書類は以下の通りです。
・確定申告書 ・源泉徴収票 ・本人確認書類のコピー(運転免許書やマイナンバーカードなど) ・登記事項証明書 ・不動産売買契約書または工事請負契約書 ・年末残高等証明書 ・住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
旧耐震基準の物件の場合は、上記に加えて耐震基準適合証明書や建設住宅性能評価書などの書類も必要です。
購入した中古住宅が、住宅ローン控除の対象となることが証明できる書類を用意しておきましょう。
(3)還付金または減額された分の納税通知書を受け取る
住宅ローン控除が適用された後には、還付金または減額された分の納税通知書を受け取ります。
基本的に、住宅ローン控除では所得税から減税されますが、引ききれなかった分は住民税からも控除されます。
還付金の場合、申告から1ヶ月〜1ヶ月半ほどで指定の口座に振り込まれるため確認しておくようにしましょう。
(4)2年目からは年末調整で住宅ローン控除が可能
住宅ローン控除を受けて2年目からは、確定申告ではなく会社員の人は年末調整で住宅ローン控除が可能。
年末調整の書類を勤務先に提出する際に、以下の書類も提出して申請するようにしましょう。
・住宅ローンの残高証明書 ・住宅借入金等特別控除申告書 |
住宅借入金等特別控除申告書は、確定申告をした年の10月頃に税務署から送付される書類。
初年度にまとめて送付されるため、無くさないように保管しておきましょう。
一方で、毎年確定申告をする必要のある個人事業主の方などは、2年目以降も確定申告が必要です。
忘れずに申請しておきましょう。
6.中古住宅で住宅ローン控除を受けるときの注意点3つ
中古住宅で住宅ローン控除を受けるときには、以下の3つのポイントに注意しておきましょう。
・中古物件に注意 ・返済期間に注意 ・所得額に注意 |
それぞれ順に解説していきます。
(1)中古物件が新耐震基準に対応しているか確認する
多くの場合、旧耐震基準の住宅は住宅ローン控除の対象外となるため、購入を検討している物件が新耐震基準に対応しているのかを確認しておく必要があります。
一般的に、築40年未満の物件なら新耐震基準が採用されています。
築40年以上の物件では耐震基準によって住宅ローン控除の対象外になってしまう点に注意が必要です。
また、住宅の省エネ性能によって、借入限度額が3,000万か2,000万と、1000万ほど変わるので、省エネ性能にも注目しておきましょう。
(2)返済期間が10年以上か確認する
住宅ローン控除では、10年以下の返済期間は控除の対象外なので、短い期間のローンだと対象になりません。
そのため、住宅ローン控除を受ける際には、返済期間が10年以上かを確認しておきましょう。
物件価格が安くその後リフォームをお考えの人は、『リフォーム一体型ローン』を検討するのもおすすめです。
また、中古住宅購入とリフォームをお考えの人は国や自治体からの補助金なども合わせて利用できないか、事前に確認しておくようにしましょう。
(3)所得額が2,000万円以下か確認する
住宅ローン控除では、その年の合計所得額が2,000万円以下の人が対象です。
合計所得が2,000万円を超えてしまうと、住宅ローン控除を利用できないため、その年の収入も気にしておくようにしましょう。
7.住宅ローン控除法改正のまとめ
住宅ローン控除では、法改正前と後でこのように変わっていました。
法改正前 | 法改正後 | |
控除期間 | 原則、10年間 | ・新築住宅、中古再販住宅は2025年まで住宅ローン控除が13年に ・それ以外の中古住宅は10年間 ・原則的に昭和57年以降に建築された新耐震基準適合住宅が適用条件に変更 ・旧耐震基準の物件は、耐震基準適合証明書などで耐震性を証明する必要がある |
控除率 | 年末の住宅ローン残高の最大1%が所得税、住民税から控除 | 年末の住宅ローン残高の最大0.7%が所得税、住民税から控除 |
最大控除額 | ・中古住宅の最大控除額は200万円(上限2000万円の1%×10年) ・新築住宅で条件を満たしていた場合は、最大500万円(上限5,000万円の1%×10年間) | ・中古住宅の最大控除額は210万円(限度額3,000万円の0.7%×10年間) ・新築住宅または買取再販住宅で条件を満たしていた場合、最大409.5万円(上限4500万円の0.7%×13年間) ※2024〜2025年に入居のケース |
中古住宅においては、法改正によって築年数要件が緩和されるなどメリットもありましたので、これから住宅を購入する人は控除の対象になる可能性も高くなります。
条件や最大限度額にも注意しながら、住宅ローン控除を使ってお得に中古住宅を購入しましょう。
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ライフディレクション事業部 設計チーム / 一級建築士 / 既存住宅状況調査技術者